「ケナフで森は救えない」というのは本当ですか?

 

私たちはこう考えます。

ケナフ協議会 会長  稲垣 寛

 

 昨今、アンチケナフの意見がインターネットや新聞紙上その他で発表されております。ここに誤解のないように、会長としての見解を加えて、皆様に御説明しておこうと考えます。

 一番目は、日本製紙連合会の『「ケナフが森を救う」というのは本当ですか?』と題する同連合会の『紙・パルプ』誌上およびインターネット上でのQ&A方式の8つの質問に答える形式の内容です。これらを要約しますと、

1)製紙業界は森林破壊をしていない。その理由は、パルプ材の輸入は先進国が主であって熱帯林には手を付けていない。パルプ材は残材を使用し、伐っているのも低質材(細い木、曲がった木など)である。

2)ケナフもCO2を吸収することは認めるが、ケナフは森林を救わない。

3)ケナフパルプのコストが高過ぎる。の3項目になります。

1)については、筆者がケナフの導入を志した動機が、当時、南方材の輸入先の50~70%が日本であり、カリマンタンやボルネオ奥地の森で生活している人達の代表が、木を伐らないで、森を破壊しないでと、日本に泣いて陳情に来たのを見ていたからであり、その後フィリピンやマレーシアをはじめ、すべての南方諸国は木材の輸出を禁止しており、日本も輸入先を先進国に変更した事実があることと、製紙連合会の統計によっても、残材とほぼ同量の木材(低質材と称する)が伐採されており、輸入木材の40%強を消費する製紙産業は、将来ともに森林への影響は非常に大きいという点を指摘しておきたい。もちろん、計画的な植林計画で森林を管理しながら増強していくことは、環境問題に取り組んでいる人達であれば、賛成であることは当然であります。

2)のケナフは森林保全に役立たないとの説には全面的に承服しかねます。1tのケナフ紙は1tの木材パルプ紙に相当する訳で、それに伴って森林の伐採を少しでも妨げることは、小学生の算術でも出来ることです。

3)のコストの問題は重要でありますが、100年以上の歴史を持つ完熟した木材パルプからの製紙産業と、始まったばかりのケナフとを比較することには無理があります。また、日本で生産するケナフパルプとのコスト比較をするには、日本の山林で伐採した木材からの木材パルプと同条件で比較する必要があり、単位面積当たりのケナフの収量、連作障害を予防するための休耕の条件など常識的な数値を入れて比較計算することにより、その結果は明らかに違って参ります。

ケナフに関係する我々は、ケナフの花から根まで完全利用することによりコストを引き下げることと高付加価値製品を開発することに努力中であります。高付加価値製品の開発は日本において、また、量を必要とする製品は海外素材を利用することにより、二面作戦を考慮中です。2000年代には環境が経済をリードする時代が到来することも予想され、その場合には大規模のケナフ栽培も可能になることでしょう。

 日本製紙連合会の件は『ケナフをめぐる論争』として『神戸新聞』(1999年11月21日付け)に掲載され、また、『製紙業界がいう、ケナフで「森は救えない」は本当か』という題で『日経エコロジー』(2000年2月号)にも取り上げられました。記者の意見として、ケナフをけなすことにより木材から紙の位置を上げるようなことよりも、ケナフをもう少し長い目で見守ったら如何かと、期せずして一致して述べていることが興味深い。

 二番目は、朝日新聞のミニ時評欄に掲載された『非木材紙の草ケナフ「結構ずくめ」は本当か』という記事です。大要はケナフが広くもてはやされているが、大阪市立大のS.Hさんの『アンチケナフ』のホームページの中の、野外での生育データが不十分だから田畑のあぜや休耕地、河川敷へのケナフの植栽はやめるべきだとの内容を紹介し、これに対する広島ケナフの会や筆者の反論を載せ、そのあと記者の意見として、琵琶湖のヨシの代わりにケナフを植える案があると聞くと、何もそこまでと言いたくもなると結んで、アンチ・ケナフのホームページのアドレスを紹介している。

 一度でもケナフを育てた経験のある人は、発芽後は勢い良く生長するが、播種時には温度や水分に十分注意しなければならない植物で、冬には根までも枯れる一年生植物であることを認識しているが、ケナフを知らない人やこれから取り上げてみたいと考えている人は、推進か否定か判断がつかず、結論が出るまでは見合わせようと考えられるでしょう。

 記事の中で、ケナフ協議会・稲垣 寛会長も「セイタカアワダチソウのような生態系への影響はない。植生の歴史の長い中国や米国でも証明されている」と紹介されているが、アンダーラインの部分は削除されている。電話取材であるので止むを得ない点もありますが、重要な語句であるので、敢えて訂正をしておきます。

 記事にあるホームページを開いて見ると、勉強不足と学生グループなどの若い者にありがちな一方的に思い込みの激しい、勝手な内容が19ページにわたって記載されているのに驚いた次第である。筆者の名前を出して、Q&A方式で、自分に都合のよいバーチャルな質問をした上に、捏造(ねつぞう)した答えを作っている。答えを見る限り、生態系への影響に関する知識が不十分なまま活動を展開し、関係者に危機管理意識が低いと見当違いの批判をしている。その上、農林水産省のケナフ・プロジェクトの作付体系研究室に電話して、ケナフが在来植物に与える影響は?という質問に対して、回答が不十分であるとして(このような定性的で漠然とした質問に電話で答えるのは無理である)、同省は『有用性』のみを優先して栽培植物をどんどん移植したために、日本の低地の草原は帰化植物だらけになったと述べています。勉強不足の上に自己主張が強く、学ぶ前に自分の考えだけが正しいとする質問や解釈に、農林水産省も対応に苦労されたことと、同情を禁じ得ません。

 ケナフは生長が著しく速いために、そのパワーにより、日本の生態系に及ぼす影響を危惧する人々も多いと思いますので、現在判っている体験を検証しながら考えてみたいと思います。

 まず、『ケナフは生態系を侵さないか?』という質問は科学的ではないと思います。侵すか、侵さないかの定性的な質問ではなく、『ケナフはどの程度生態系を侵しますか?』という定量的な質問であるべきだと思います。電気は安全ですかという質問に危険ですと答えたら、使用を止めようという事になるかも知れませんが、絶縁することにより安全に使うことが出来ます。また、人体に注射をする場合に、異物が入ることは事実ですが、効果が害を上回れば(もちろん無害が好ましいが)、その薬は採用されます。

 約1000年前に大根、約100年前に白菜が日本に導入された時には、これらの野菜は外来種でした。それが食用として有用で、しかも従来の生態系に与える影響が小さかったために、日本に定着しております。ケナフは種を播かなければ発芽しない点で、上記の野菜類と同様であります。ケナフの栽培に携わっているある人は、種がこぼれて発芽するようなら、種を購入しなくて済むのにと言っていますが、残念ながら日本で自然に収穫される種は年々発芽力が衰えてきています(発芽力の高い種を採種する実用研究は日本でも行われています)。種は、中国では広東省(コワントン)や海南省(ハイナン)などで、米国ではメキシコなど中南米の気温の高い地区で結実させています。

 ケナフは実生で、発芽まで注意深い管理が必要です。種の飛散の可能性が少なく、一年生植物で冬には根まで枯れるなどの生態的見地から、大根・白菜・菜種などと同等程度の安定した植物と考えられます。越冬をし、強力な冬芽を持ち、繁殖力旺盛(おうせい)で、種も遠くに飛散するセイタカアワダチソウとの比較は論外と言わざるを得ません。

 生態系への影響は、更に同一地区の土地で長年月をかける必要がありますが、何百年もの栽培歴を持つ中国やインド、何十年単位の栽培歴の米国などでも、生態上の問題で他の植物に悪影響を与えたとの報告は全くありません。当方から彼らに生態上の問題点を質問すると、逆に問い返してきて不思議そうな顔をします。日本でもケナフ品種『青皮3号』について、昨年で8年間の実績を積みました。また、万一前年度の種で群生することがあっても、結実する前に刈り取れば、翌年からの発生は皆無になることは当然であります。

反対意見の出ることは、その運動が広がってきた証拠であるということも出来ます。その中には気の付かなかったことや参考になることもあり、コミュニケーションを図ることの必要性を認めます。

 

本文はケナフ協議会ニュース81号(2000年1月発行)の「新年の御挨拶」の一部を転載したものです。

 

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info@kenaf.ne.jp

『「ケナフが森を救う」というのは本当ですか?』はこちらに掲載されています。
日本製紙連合会のホームページ

http://www.jpa.gr.jp/
 
 
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