【Q1】ケナフは環境に優しいとは言えない?

環境に優しいをどのように定義するかによって、議論が分かれると思います。野生、すなわち、全く人間とのかかわりのない自然状態が環境に優しいとするならば、人為的に植えるケナフはもちろん環境に優しいとは言えません。しかし、米・麦・トウモロコシ・トマト・ジャガイモ・綿花など人間のための作物は、すべて野生の自然環境を破壊しながら栽培されてきた歴史があります。また、緑の革命では、これらの収量増大のために、農薬や化学肥料が大量に投入されました。その結果、現在の膨大な世界人口が支えられ、19世紀のイギリスの経済学者マルサスによって予言された人類の壊滅状態を回避できたと考えられています。それは、ひとえに野生として存在していた自然環境を破壊してもたらされたものです。その反省が行われているのが現在です。人口爆発による人類の肥大化を今後いかに食い止め、次世代の人々の衣食住をいかに確保するかを今真剣に考えなければなりません。ケナフは、マルサスの予言を回避させた多くの有用栽培植物と同様に、人類の未来を担う作物として期待されています。ケナフを生かすも殺すも人類の知恵次第でしょう。

『人間の手が加えられる』との意味では、ケナフも環境に優しいと言い切れません。しかし、アメリカ農務省で、ケナフが多くの植物群の中から栽培繊維作物として選抜され推奨されるに至ったのは、1.地味を選ばず広範な地域で栽培できること、2.肥料投入量に見合った旺盛(おうせい)な成育とバイオマス生産量の大きさ、3.病害虫の少なさからくる農薬の使用量の大幅な低減、4.栽培の容易さからくる低エネルギー投入型農業の実現、5.製紙原料としての優秀性、6.用途の多様性、7.土壌改良効果が期待できること、などの多くの理由からです。アメリカでは、1970年代から1980年代にかけての急激な農産物の大増産によって土壌浸食や農薬過多、農業離れの進行が起こり、それらをケナフ栽培で緩和することが期待されました。アメリカ南部では、古くから綿花が大面積で栽培されてきました。ケナフは綿花と異なり、単位面積当たりの利用できるセルロース生産量が非常に大きいのです。利用法さえ確立されれば、農薬を大量に使用する綿花栽培面積の低減、ひいては将来の食糧不足に備える農地の確保もできると考えられました。そこで、農務省はケナフを環境に優しい栽培作物として評価したのです。この意味では、ケナフは環境に優しい植物と言えるのです。

(本文はケナフ協議会ニュース85号の一部を転載したものです。)

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【Q2】樹木とケナフはどちらが優れている?

ケナフを、どの樹種、樹木の何とを比較するかでしょう。熱帯の樹木の多くは、ただ単に焼き畑で焼却され熱帯林の減少に大きく関与しています。これは経済的価値のある樹木が現在の熱帯には少ない上に、現地での加工技術が未発達であったり、その他多くの理由からそうなっているのです。熱帯樹種の多くは樹脂分が多量に含まれているなど、加工、利用に向かないため、単に焼却されているのです。かねてから単に焼却するのではなく、バイオマスエネルギー源として利用し、生成する木炭を農民に肥料として与えることができればと思っています。日本でも、遅々として利用の進まないスギ・ヒノキの間伐材や林地残材や取り壊しの際に発生する大量の建設廃材をバイオマスエネルギー源として利用することが、検討され始めています。もし、日本でこの分野の技術開発が進めば、熱帯地域への技術移転も実現可能ではないかと期待しています。

利用法が見付からない熱帯の樹木と比較すると、ケナフには利用上の障害となる成分はほとんど含まれていません。非常に癖のない、素直な植物なのです。これは、ケナフが一年草であり、熱帯の樹木のように長年月生き延びるのに必要な成分を生合成する機構が不要だからではないかと思われます。その代わりに、セルロースを短期間に最大限に合成する機構を持っているのではないでしょうか。葉はタンパク質などの栄養分を大量に含み、種子からは脳細胞の活動に有用とされるリン脂質などを多く含む食用油がとれます。種子には更に悪玉コレステロールの抑制物質も含まれていると報告されています。皮の靭皮(じんぴ)繊維は非常に強度が高く、紙パルプのみではなくボード原料としても開発が進み始めています。芯(しん)の繊維は紙パルプやボードはもちろん、家畜の飼料としても使えます。まだまだ、多くの興味ある性質が次々に見付かっています。樹木でケナフに相当するものがあれば、それも検討の対象になると思いますが、現在のところそのような話は聞いていません。ケナフを米・トウモロコシ・ジャガイモなどと共に栽培し、どのように利用して行くかは、次世代の人類の知恵次第であろうと思っています。

紙パルプ原料としては、よくユーカリと比較され、どちらが優れているかが議論されます。それぞれの最大収量をどの数字にするかに議論が集中しているように思われますが、いずれも栽培植物であり、植えられる地域の事情によって評価は分かれるでしょう。もちろん、それは現地に加工技術と需要が存在するかどうかにもよります。また、地域によっては、ケナフとユーカリのいずれもが共存するアグロフォーレストリーの形態が考えられても良いでしょう。タイ国では、現在、ユーカリに軍配が上がり、ケナフ(ここではタイケナフ)は劣勢のように見えます。しかし、この状況はまだまだ検討の余地が残されています。

現在の紙パルプ産業は大きくなり過ぎています。発展途上国で現在の大量生産システムを多数作ることは、地球環境にとって得策とはとても思えません。森林資源を紙パルプ生産に向けられるほど、森林資材を十分に持っている国はそれほど多くないからです。非木材繊維の利用率の拡大が求められる所以です。ケナフの紙パルプへの加工のためには、多目的作物としてのケナフの栽培システムと連動した、中小規模でのパルプ生産技術の開発を急ぐべきであり、その実現は将来の人類の行方を左右する重要課題と考えます。すぐに完全な中小規模のパルプ工場を建設することに無理があるなら、過渡的な措置として、大きな工場に中小の非木材処理工場を併設し、大工場がその廃液処理やケナフなど有用な非木材繊維の利用拡大に貢献するという方式から始めるのも一案ではないかと、思っています。男女機会均等法やアメリカのマイノリティー(少数派)保護法などと同様に、大きな工場に中小非木材繊維処理工場の併設を義務付ける政策などが検討されても良いかも知れません。

(本文はケナフ協議会ニュース85号の一部を転載したものです。)

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【Q3】学校でのケナフ栽培は良いこと?

日本でのケナフ栽培も基本的には農地で行うべきでしょう。ケナフは栽培植物であり、日本ではまだその加工・利用法は確立していません。経済作物としての栽培・加工・利用はまだ研究開発段階です。昨年度から、農林水産省でも休耕田での栽培についての検討が始まりました。その結果を期待したいものです。現在でも一部では日本で栽培されたケナフを用いた製品が開発され、販売されています。ケナフ和紙(名刺・壁紙など)やケナフ椎茸(しいたけ)などです。しかし、その経済性はまだ厳しい状況です。栽培・収穫・加工・利用を日本的に行う方策を模索することが重要であり、今後も検討が続くでしょう。まだ、農民に普及できる段階ではありません。多方面から健全な検討を加えて、段階的に進めていくことが大切だと考えます。現在、日本で製品化されているものの多くが中国やタイ国からの輸入に頼っている事実は、一般にはあまり知られていないと思います。

一般市民やNPOで観賞用・勉強用・趣味の一環としてケナフを育てることや、学校教育で教材の一つとしてケナフを利用することも重要な側面です。真面目に栽培に取り組んで、花を楽しみ、パン・クッキー・ジュースなどを作り、手漉き紙で卒業証書を作り、観察日記・作文・歌などを創作する。非常に有意義なことではないでしょうか。子供たちには夢と希望が必要です。ケナフはその栽培・加工・利用を通して、子供たちにいろいろなことを教えてくれます。それは○、×式とは違い、解答の決まっていない自然を学ぶことでもあります。ケナフを栽培することで、夢と希望を実現するには忍耐と努力が必要であることを学ぶことができます。植物は愛情をかけて育てて初めて花開くのです。全国で素晴らしい作文や作品が生まれ、素晴らしいグループ活動が展開されているのは、ひとえにケナフに夢をかけた人たちの情熱によるところでしょう。アメリカでは、市民レベルでのケナフの利用は日本程進んでいません。日本的なケナフの利用法として、学校でのケナフ栽培の教材化の進展にこれからも注目していきたいと思います。

子供たちはケナフを通していろいろなことを学ぶことができます。彼らの行き先に待ち構えている環境問題・農業問題・教育問題・南北問題・人口問題などを解決するためも糸口になることを期待したいものです。子供たちにこれらをどのように教えるかは重要な課題でしょう。

(本文はケナフ協議会ニュース85号の一部を転載したものです。)

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